ナイフ理論1(形状と役割)

みなさん、狩猟行かれてますか?

どうも。私です。


さて今回は、ナイフの話。狩猟する人にとっては結構重要かつ楽し身の一つでもあるナイフや刃物。今回はここにフォーカスしてお話していきたいと思います。

さて、ナイフの形状というのは、大雑把に言っても上記ぐらいあるわけです。また最近は「ブッシュクラフトナイフ」といって、ドロップポイントとユーティリティの間ぐらいの別の形がよく出ています(後述します)。まぁ簡単に言ってもかなりの「沼」な訳ですが、北海道の狩猟に関しては、実は非常にシンプル。頑張って使うとしても

  1. ドロップポイント(ブッシュクラフト含む)
  2. スキナー
  3. ユーティリティ

の3つだけ。他は無用の長物となります。

理由は簡単で、北海道の狩猟の場合、ナイフの使い道は「解体」がメイン。ほとんどが銃猟で、止め差しも銃で行うことがほとんど。つまり「刺す」という仕事は基本ありません。それよりも、馬鹿でかいエゾシカは運ぶのも大変なので、倒れた場所で腹出し、山深く入っているときなどは、その場で腹を開けずに背ロースと後ろ足を取って埋設というのも多いので、「少ない荷物で大ばらし」ができることが肝要になるわけです。あとは基本的に雑用ぐらいなんですよね。

じゃぁ、とりあえずドロップポイントを、という前に、もう少し詳しいお話を。



ナイフ形状のポイント

ナイフの形状と使い勝手を見る際に、各部に名前があった方が説明しやすいので、ナイフの神様ラブレスが考えたドロップポイントをベースに、簡単に名前をつけてみました。ラブレスをはじめ「美しい」と言われるナイフというのは、上記のように、カーブの切り替え点が5つ、ピークが4つで構成されていて、そのつながりがなだらかであるほどに「美しい」とか「かっこいい」みたいな印象を与えてくれるようで、これらのポイント位置によって、使い勝手が変わってくるもの、として考えてみてください。


スキナーの形状

ラブレススキナーは、ポイントをガッツリ上げて刃先Rと刃元Rがおおよそ均一で丸みが強い形をしています。これによって、刃部を大きく滑らかに使うことができ、皮剥の作業に最適化してあるわけです。またポイントの先角はある程度大きい状態の方が、ポイントが皮や肉に傷をつけにくいため、背先Rが少し競り上がったデザインにしたのだと思います。


ユーティリティの形状

ラブレスのユーティリティは、元高から低めで、全体的に細身なのにも関わらず、ドロップはしっかり取られていて、ポイントが刃のセンターぐらいまで落ちています。

この形状になると、削部は直線的になり、鉛筆を削るような加工がやりやすく、また刃先Rの丸みが小さくこちらも直線的になるため、切る動作は先端付近が非常に使いやすく、初心者がキャンプで食材を切るなどでも扱いやすい形です。またドロップ量が大きいので、回転させやすく、穴を広げるような動作や刺す動作も比較的やりやすい、ちょっとした魚や鳥を捌く、根菜の皮剥き等調理から工作など万能的な形と言えます。

ちなみにケーバーも似たような理論で成り立っていますが、ユーティリティをもう少し小さくしたような形で、細工レベルに近くなる感じです。


ボウイ、サバイバルナイフ等の形状

これはハンターでも持っている人は多い割に、使っている人はほとんどいないというナイフですが、使わないのには理由があるんです。

利点としては背先のRが逆反りしていることで、刺す時にナイフが上向きになるのを抑えてくれるので、「真っ直ぐ刺す」ことができるのですが、それ以外は他の形状を使った方がはるかにやりやすいことが多いんです。まさに「帯に短したすきに長し」と言った感じ。カッコはいいんですが。

切部は意外に狭く全長は長いので、切る動作はやりにくい。先角がそこそこ大きいため「刺す」時に折れにくいものの、加工等で先端も使いにくい。刃元のRはフラットなので削る動作はまだやりやすいものの、工作には重く、枝払いなどならナタや斧の方が使いやすい。という感じです。



ブッシュクラフトナイフの形状

ブッシュクラフトナイフは、刃側の形状はボウイ系、背側はドロップポイントに近い感じになっているものを指します。ブッシュクラフトでは大抵「バトニング」が必須となるため、刃元Rをフラットにし、なるべく直線部分を長く、また背先Rも直線に近くしてドロップを小さめにし、バトニングしやすい形状になっているわけです。また刃元Rはフラットなので削る動作はやりやすく、フェザースティックなどはやりやすいものが多くなります。

ただ実際のところ、「ナイフ一本でアウトドア」となると、刃先Rの丸みが大きいため、切部が小さく切る動作はやりにくく、先角が大きいので、先端も使いづらい。刃厚も厚いので、料理等を含め細かい作業はやりにくく、一本ではかなりやりづらい、というのが現実。

獲物の解体に関しては、モーラなどよくお勧めされていますし、バークリバー最高!みたいな方もいらっしゃると思います。実際そこまでの不便もないですが、総じてドロップ量が少し足りず、回転させる時に「引っかかる」感じがあります。また逆刃にすると肉や内臓を傷つけやすい。また、(ここには説明はないですが)スカンジグラインドやコンベックスグラインドは「骨に沿わせる」ことが難しく、肉が残りやすい。つまり新品の形のままでは「使えないことはない」というレベルで、まだ上を目指せるんですね。

ブッシュクラフトナイフを1本だけ狩猟に持っていくのであれば、少なくともドロップを少し足し、刃先Rの丸みを少しフラットに落とし、できればグラインドも左側だけでもフラットグラインドに近くすると、劇的に使いやすくなります。


よくできているドロップポイント

こう見ると、やはりドロップポイントはよくできていて、スキナーのように切部の丸みが大きくあり、肉を切り出すのに刃を長く使え、ドロップ量が大きいので回転性能が高く、背ロース等をくり抜くような作業の時に引っかかりがない。またこれもドロップ量のおかげで逆刃で持った時も肉や内臓などを傷つけにくい。私がいうのもなんですが、本当によく考えられたナイフだなということがこの図でわかるわけです。

ただ、ラブレスドロップポイントは、基本刃厚が4mmで長さが3in(7.62cm)が基本らしいのです。確かに「短いナイフ」の方が取り回しはいいんですが、肉を切り分けたり血肉を切り捨てたりするような時には少し短すぎますし、短い分往復が多くなり、肉の切り口が段になってしまうことも考えられます。うつ伏せ状態でモモを外す時などは深いところに届かなかったりします。また厚さも、近年の高性能な鋼材であれば耐久性が高いので、もう少し薄い方が軽く、作業もしやすいのではないかとも思います。

なので、おそらく近年の鋼材であれば、このドロップポイントよりも少し長く(4in 10cm程度か)、薄く(3mm程度か)、切部のカーブを残しつつ若干ユーティリティよりの形状にして、回転効率と先端効率を上げてやるのが一番理想的な形になるのでは?というのが私の予想です。



ちなみに日本の西型骨スキは、この理想形にかなり近い

西型の骨スキ包丁は、刃渡りが15cm(刃は12cm)ほどあり、厚さは3mm程度。包丁としては厚めですがナイフとしてはちょうどいい厚み。で、形状としても刃先Rと刃元Rが連続して丸みが大きいので、スキナー的な要素も持ちつつ、刃部高が低めでユーティリティ的に先端も使いやすい。また急激ではあるけれどドロップ量がしっかりあり、逆刃も回転もやりやすい。そしてこの背先Rの形状がボウイ等の利点である「真っ直ぐ刺す」こともサポートしてくれるので、喉部を裂く時もザクザク入れられる。解体に関しては、パーフェクトと言っていいスペックなわけです。

実際、本州では「解体にはこれ一本」というハンターも多く、牛豚の屠殺場等でも解体作業のほぼ全てにこれが使われていたりもします。(まな板を使う場面では東型が多いみたい)

これを使う時の問題点としては、やはり「シースがなく持ち運びが不便」である点と、山行のお供としては丈夫さが一般ナイフより劣るので「チョップ」や「削る」などのパワフルな工作的なことは不向き。

ハンティングの山行に1本だけ持っていく、となると少し頼りない感じになり、悩ましいところです(笑




形状と意味

ここまでをまとめると、5点と4つのピークで、大抵のナイフ形状を表すことができ、各寸法の値等によって使い勝手における「意味」とつなげて考えることができるのがわかったかと思います。なので、これらをまとめて一覧表にしてみました(わかりづらくて申し訳ない。。

今使っているナイフが、「なんとなく使いづらい」とか「もう少しこうしたい」みたいなことがあれば、上の表を参考にしてご自分のナイフの手直しなどに使ってもらえるかと思います。

また、自分でナイフを自作!という方やもっといいナイフを作ってみたい方にも、参考にしてもらえると嬉しいです。


今回はできなかったグラインドと刃厚の話は別の機会にしてみようと思いますので、お楽しみに。。


(っていうか、この内容だけで本一冊書けそうだな。。。


射撃の大学

射撃は半年間で8割あたるようになる!? 射撃は全て「同じ」ように撃つ事で効率良く上達し、全くの初心者から半年間で、散弾、ハーフライフルでの競技射撃、狩猟、その全ての射撃で8割以上あたるようになった著者。 銃の撃ち方の基本から練習法、クレー射撃(skeet、trap)、狩猟(エゾシカ、鴨など)のやり方などを忘備録的に書いています。

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