ナイフ理論2(グラインド)
どうも。私です(だれやねん
さて今回はナイフ理論2回目ということで、グラインドとについてお話ししていきたいと思います。
また今回も山秀さんから画像お借りしました。
グラインドというのは、切ろうとする時の「押し広げ量」と、「切り込み時の角度」に影響があり、用途ごとに使いやすさに大きく影響します。
「切り込みやすさ」と「割りやすさ」
「切る」という動作には、「切り込む」という縦方向の力と「割る」という横方向の力が同時にかかります。簡単にイメージするには、シンプルに「刃」のない四角いものを、厚いものと薄いもの2つ用意して、こんにゃくのようなものに「押し付ける」ことを考えてみてください。
上の図のように、太いものほど対象を横に「押し広げ」ないと入れ込むことができず、太いものほど「割る」力が強くなります。また薄いものほど入れ込むのは簡単であり、その分「割る」力が弱くなる、ということはイメージできると思います。
つまり、グラインド形状が「薄い」ものほど縦に力がかかりやすく「切り込みやすい」わけで、逆に「厚い」ものほど「横方向」にかかる力が強くなり、薪などを「割る」ほうが得意になります。
つまり、グラインドごとに「切る」要素が強いものと、「割る」要素が強いものに分けることができるわけです。切るためのグラインドとしては、
- ホロー
- チゼル
- フルフラット
が「切る」ためのグラインドと考えることができ、
「割る」ためのグラインドは
- コンベックス
- スカンジ
で、この中間に位置して「切る」寄りなのが「セイバー」と言った感じと考えることができるわけです。
「耐久性」は「割る」は基本同じと考えていい
アウトドアナイフなどは、一本で様々なことをやりますから、耐久性が重要になります。この時刃の耐久性は当然「厚みがある」ほうが丈夫であり、厚みと「割る力」は同等と考えることができます。つまり「割る」力が強いものほど耐久性は高い、と考えることができます。
つまり、タフな使い方を考えた時の耐久性は、元鋼材の厚みが同じ場合
- コンベックス
- スカンジ
- セイバー
- フルフラット
- チゼル
- ホロー
というような順番になるわけです。
そして、グラインドの耐久性が低い時に耐久性を足そうと思えば、元鋼材を厚くするとよい、というふうに考えることができます。
近年のブッシュクラフトナイフは、ほとんどがコンベックスかスカンジが採用されているのは、「バトニング」をするからで、厚みも4〜6mmほどとかなり厚めになってきています。これは斧やナタのような「割る」力と「耐久性」が重視されているからと考えることができます。
そしてこのナイフで人参やジャガイモなどを切ろうとすると、「バキッ」と割れてしまうのですが、これは「割る」ための形状なので、食材が割れて調理がしづらいのは当然なんですね。
「沿わせやすさ」
次にグラインドと「添わせやすさ」というのを考えてみたいと思います。
動物や魚を捌く際は、骨などに「沿って」切り込む必要があるわけですが、両刃の場合、垂直面に対して刃が刃厚分ずれているため、どうしても沿わせる時に「斜め」にしなければなりません。この角度が小さいほど、「沿わせる」動きはやりやすく、切たいところを切り、切りたくないところは切らない、という動作がやりやすくなります。
※この図の数値は、このイラストの角度をそのまま測っただけなので、必ずしもこの値ではないのですが、「角度の差」をみてもらうにはちょうど良いかと思い数値も載せています。
このことから、チゼル(片刃)は圧倒的に「沿わせる」動作がやりやすくなっていることがわかると思います。日本の和包丁や骨スキ包丁、すじ引きなどが基本的にチゼル(片刃)になっているのは、骨や皮などから綺麗に肉を外すことができるため、と言えるわけです。
「削りやすさ」はグラインドではなくコバ形状で決まる
ブッシュクラフトナイフが近年よく売れているそうですが、その目的はやはりバトニングもそうですが、「フェザースティック」作りをしたいから、というものが多いようですね。
このフェザースティックは「コンベックスグラインド」が一番やりやすい、なんていうふうに言われています。ですが実際は、コンベックスグラインドは、一般的な先端形状が木を削る時に「ちょうど良い先端形状になりやすい」と言うだけで、実際のところではナイフがどんな形状であるかよりも「コバの形状」の方が重要だったりします。
この図は「削る」と言う要素、つまり切り込み量と刃角(すくい角、逃げ角)、当たり面が同じであれば、同じように削れることを表した図です。
コンベックス以外のグラインドでフェザースティックを作りにくい最大の理由は、木を削るには刃角が小さすぎる(鋭すぎる)ために、刃を立てるとすぐに「くいこむ」し、食い込まないように寝かせると切り子が薄くなりすぎて「ちぎれる」てしまい、ちょうどよく削れる角度が「ない」場合が多いんです。実際は木の硬度によっても変わりますが、「ちぎれる」と「食い込む」の間が広くなる刃角は、包丁などよりはるかに「鈍角」になります。
コンベックスグラインドであれば、刃角が初めから鈍角になりやすく、「木を薄く削るのに適した」寸法に、たまたまなりやすい形状をしているわけです。実際は一番フェザーに向かないとされるホローグラインドでも、先端形状をコンベックスに近くしてやると、同じように綺麗にフェザースティックが作れます。
また、コンベックスの場合はナイフ角度に関わらず、湾曲したナイフの腹が木の方に広く当たるので安定しやすく、ナイフを木に当ててる状態で「ちぎれる」と「くいこむ」の間を探しやすいんですが、一般的なナイフのコバは1mmもないので安定しづらいということも言えます。なのでフェザースティックを上手に作りたければ、鈍角気味のコバを少し大きめに取ると良いわけです。
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