エゾシカの移動速度

野生動物は普段「走らない」

意外と、野生動物は「いつも走っている」と思っている人が多いですが、ほとんどの野生動物の実際はほとんど走りません。「走る」という状態は人間で言うと「キレた」「パニック」のような状態であって、人間もたまにはキレたりパニクったりしますけど、頻度としては大体同じくらいと考えるとイメージがつきやすいかもしれません。

自然の中にいる分、変な刺激は少ないですし、鹿の場合は外敵にクマなどがいますが、これらが襲ってくる事は、人間が交通事故に遭うようなもので、これも実際はほとんどありません。

なぜ野生動物が「走っている」イメージがあるかと言うと、これはおそらくドキュメンタリー番組のせい。ドキュメンタリーを撮るときは野生動物に近づくので、かなりプレッシャーがかかっていて、何かきっかけ(音など)があると「いつもと違う」からパニックになり走り出すわけです。画的には走っている方が「野生感」があり、「ぬぼーっ」としている画より見栄えがするので、結果わたしたちが見ることになる野生動物というのは大抵「走っている」画になるわけです。

人間が近づかなければ、そもそも走る用事などないので走りません。人間も電車に乗り遅れるなどの「走る用事」がない限り走りませんよね。それと同じです。


エゾシカは基本何か食いながら歩いている

シカの風下から双眼鏡で確認できるところまで近づき、しばらく観察していると、「ただ歩く」ということはあまりせず、大抵は何かをつまみ食いするようにして歩きます。冬の北海道でも実は食べられるものは結構あり、木の芽、木や草の根、笹、木の皮など、雪が少なければ十分に脂肪を蓄えるだけ食べています。

およそ5〜30m間隔ぐらいにある食えるものをしばらくカジって、しばらくしてから前進しまたすぐにカジり出します。

歩いている時間よりはるかに何かをカジっている時間の方が長いので、平均移動速度はだいぶ低くなるわけです。

また、シカは雪を食べませんから、真冬でも必ず「水」を飲みに沢をおりますし、食べたものを落ち着いて「反芻」するために見晴らしのいい平地になった高台に行きます。

つまり、いつも何かを食べながら沢を下り、水を飲み、何かつまみながら尾根を上がり、反芻する、と言う基本行動パターンがあり、メスはほとんど毎回同じルートを通り、同じ場所に戻ることが多く、オスはほぼ毎回違うルートを通り、同じ場所に戻らないことが多いです。

雄雌それぞれの移動距離は、雄が30km、メスが最大10km程度といわれますが、特に逃げたりしない場合は、メスはおよそ1日平均5kmぐらい、オスは平均10kmくらいになると私は考えています。



エゾシカ(メス群れ)の移動速度は時速約500m

上記の移動距離や足跡、またGPSのトラックなどでシカの動きを予想し、移動速度を大まかに計算してみたところ、メス群れの平常時の移動速度はおよそ時速500mほどになると考えています。

実際に山の中で単身で忍んでいく時、数時間前の足跡をそのまま辿っていくと足跡が「どんどん新しく」なります。私の山での移動速度は平均時速1キロ程度。めちゃくちゃゆっくりなのですが、警戒していないシカはそれよりずっと遅く、およそ1時間前の足跡ならだいたい1時間歩くと追いつきます。

私の約半分なので、およそ時速500m。街中の人は時速5〜7kmぐらいなので、人間の方がかなり早いんです。結果、山の中では「めちゃくちゃゆっくり」と意識するぐらいでも簡単に追いつくことができます。逆に、そう意識して歩かないと、速度が速すぎてプレッシャーを与えてしまい逃げられてしまいます。


警戒レベルと移動速度

ただ、注意しなければならないのが、シカは警戒レベルごとに移動速度が違うと言うこと。

私が考えている警戒レベルは5段階で、簡単に書くと以下のような感じ。


レベル1:なんとなく嫌な予感:変化なし

レベル2:匂いで「あっちに何かいる」ことを察知:少し足が早くなる

レベル3:音で「あそこに何かいる」と確信:停止

レベル4:目視で「あそこ変なやつがいる」と確認:停止

レベル5:動きをみて「ヤバい(怖い)」と反応:走る


レベル2の時には少し足が早くなるので、「風上」にいるときに「ゆっくり」追っていると、追いつけないことがあり要注意。特にタバコの匂いや服の柔軟剤、車の芳香剤などは吹雪いてない限り風下にいても気づかれるので、避けた方が無難です。

基本的に風下から追うようにし、風上に入ってしまったら距離を取られるので、回り込んだ方が結果早く追いつけたりします。


オスは行動が読みづらい

オスに関しては、行動パターンが読みづらく、あまり群れを形成しません。どうやら複数の母鹿がいるメス群れで同時期に生まれたオスは、すこしまとまって行動することがあるようですが、たまに個体がまとまっているだけで、基本は単独行動。行動パターンは結構「フラフラ」しています。

また崖のようなところも平気で行きますし、若いオスは何にもない場所で飛び跳ねて遊んで、あしあとが追えなくなるなんてこともよくあります。

逆に老練の20年選手になると、行動パターンは安定してくるようですが、ほとんど人に見つかるような場所やリスクのある場所は、長生きするだけあって、ルートとして選びません。

なので、今のところ私自身はオスの移動速度はまだ正確には把握できておらず、おおよそ雌と同じぐらいか、少し早いぐらいではないか、と予想するにとどまっています。

また、食べても美味しくないし重くて回収も大変、角以外あまり利用価値がないので、ほとんど狙いませんから、オスの研究はなかなか進みそうにありません(笑



射撃の大学

射撃は半年間で8割あたるようになる!? 射撃は全て「同じ」ように撃つ事で効率良く上達し、全くの初心者から半年間で、散弾、ハーフライフルでの競技射撃、狩猟、その全ての射撃で8割以上あたるようになった著者。 銃の撃ち方の基本から練習法、クレー射撃(skeet、trap)、狩猟(エゾシカ、鴨など)のやり方などを忘備録的に書いています。

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