エゾシカ群れの形成と忍び猟

エゾシカ群れの形成は、メスが主体です。


意外に思うかもしれませんが、哺乳類の群れは大抵メスが主体であり、

発情期に雄がハーレムを作るのではなく、メス群れを雄が勝手に取り合うスタイル、と言った方が近いんです。

そして、群れの形成のベースになる習性が違うので、忍び猟のスタイルもオスを追う場合とメスを追う場合では、差が出てきます。


今回はその辺の話を。、


メス群れの形成

メスの鹿は、前の年にほぼ100%妊娠し、5月下旬〜6月上旬ごろに子を産みます。

この時は笹などの茂みの中に子鹿を隠し、母鹿は最小限の水場と餌場、そして子鹿のいる場所を往復するように生活し、子鹿には乳を飲ませることで子は成長します。

子がある程度大きくなる秋頃から、母と子は「移動しながら食事」を取るようになります。

この時、あまりにも急な崖の近くは避け、急な坂を登り降りするような移動ルートは子鹿が通れないために取れないので、「緩やか」で「外から隠れられる」「歩きやすい」ルートである必要があり、その条件で繋がった、「寝屋」「水場」「餌場」「休み場」「遊び場」の巡回ルートを取るようになります。

この条件に合致するエリアというのはどこでも取れるわけではないので、山のごく一部のエリア(半径2キロ以内)を巡回するように生活します。

この時に、基本的にその地域で生まれた他のメスも、条件が整う同じエリアで子育てをし、同じ条件で移動するために、メスは規則正しく群れを形成するように「見える」わけです。

ただ、この群れにボスは基本的におらず、人などに驚いて逃げる際も「一番先頭に立ったメス鹿」に「ついていく」スタイルで、必ず同じ鹿が先頭に立つと決まっているわけでもないようです。

ただ、1家族の場合は必ず母鹿に子がついていく形、親子3代以上の群れの場合は一番上の母鹿(母<祖母<曾祖母)についていく傾向が強くあります。

このような形で、基本的に同じところをグルグル周回するのがメス群れであり、子鹿の成長、餌の量、雪の量などで、その周回ルート自体を変えることもありますが、一旦変わるとまたそのルートで周回し、基本的に安定しています。

そして発情期になると、その群れに雄がやってきて、交尾をします。雄は他の雄が入ってくると怒り喧嘩して、一番強い一頭とその群れの基本全てのメス(生殖可能なメスを、雄はメスの尻付近を嗅いだり舐めたりして確認します)が交尾します。

ちなみに、群れが非常に大きい(数十頭以上)場合、群れの中央付近で一番強い雄がメスと後尾をしますが、群れの隅のほうで、別の雄と交尾するメスもいるようです。

そして、同じ群れで冬を過ごし、春になり、5月〜6月の出産の時期が来ます。




雄群れの形成

子鹿は必ずメス群れの中で生まれますが、オスは1〜2歳でメス群れを離れます。ただ、「じゃぁ今日から親離れ」という区切りがはっきりしているわけではなく、徐々に群れを離れていきます。

具体的には、足跡を見ているとよくわかるのですが、メスの子鹿は母鹿のきっちり真後ろを歩きますが、オスは一応母鹿についていくものの、歩いてすぐの0歳から比較的「ふらふら」しており、成長するにつれて、一頭で崖を降りたり登ったりと、そのふらふら度合いが大きくなっていきます。

そして1歳〜2歳になると、そのフラフラがもう「ついていく」という状態を逸し、ほとんど別行動になり、そのうち群れを離れる、というように、徐々に離れていくようです。

では、離れた雄はどう生活するかというと、基本的にいつも「ふらふら」と、気の向くままに歩いている場合が多く、1日10キロ以上歩く上に、メスのように「決まった周回ルート」は基本取りません。

ただ、「餌場」「水場」「寝屋」が限られている山や、逆にこれらの環境が鹿にとって「良すぎる」場合は、雄も同じところに通うことになるので、雄が溜まる場所ができたりします。

この「溜まっている雄」を、人は「雄群れ」と呼んでいるだけなんですね。

実際はただ「生活圏」が同じなだけで、実際はそこに来る時間帯や条件などもバラバラです。人などに驚いて逃げる時も、初めは先頭についていったりしますが、リーダーのような存在がいるわけではないし、そのうち一頭二頭とその群れを離れていきます。

そして、発情期がくると、雄はそれぞれメス群れに近づいていき、交尾をします。その時に別の雄がくると、「このメスたちは俺のもんだ!」といって雄叫びをあげ、少し開けたところで喧嘩を始めます。すると、その声やツノのぶつかる音を聞いて、メスたちは少し避難しますが、他のオスは寄ってきます。

ただ喧嘩を見ているだけのオスもいれば、「じゃあ次俺」みたいに喧嘩の順番を待つオスもいて、ある程度落ち着くまで喧嘩は続きます。

そして、ある程度「一番勝ったオス」が、メスの尻や腹を嗅いだり舐めたりして、メスと交尾をし、発情期を過ごします。

その後、またいつしかその群れを離れ、メス群れのいる場所より「少し高い場所」あたりで、またふらふらと生活し、冬を迎え、春を迎えます。


オスメス混合の大きな群れ

オスメスが混合し、巨大な群れ(数十〜数百頭)になる場合もあります。これは理由が2つあり、1つはオス群れと同様で、生活環境が「良すぎる」地域というのは、奈良の鹿公園のようにオスメスが混合します。

もう一つは「大移動」をするの際。エゾシカの一部は、雪の量や寒さ等で、数日で数百キロ移動することがあります。

ほとんどのエゾシカは生まれた地域に住みますが、この移動する群れの子孫は、毎年決まった時期に集団で移動します。

この移動は基本夜中〜明け方に行われますが、まれに日中も動いていることがあり、市街地近くを通る際に目撃されたりします。

たまに市街地のど真ん中で、何十頭かの群れが目撃されることがありますが、それはこの大移動の際に群れごと市街地に迷い込んでしまい、さらに進むほどに中心地に向かってしまい、暗いうちに森に帰れず、明るくなって人に見つかる、というパターンのようです。



「単身忍び猟」と群れ


忍び猟をする時は、山の中に入りまず「足跡」を探しますが、雄の場合とメス群れの場合では追い方が変わってきます。


オス鹿の忍び猟


オスの場合は、「次にどこにいくか」が読みにくく、また若い鹿だと急に崖を登ったり、急に走ったり、行ったり来たりとするので、足跡が不安定になるため、特に複数が群れていると、どちらに進んだかすらも分かりにくくなります。

なので、一頭になったところの足跡を見つけ、「とにかく一頭の後をつける」か、居そうな沢や餌場などにとにかく行ってみて、「出会い頭」で獲る、流し猟に近いスタイルになります。

一度いた場所にもう一度見に行っても、よほど良い場所出ない限り同じ鹿には出会えないと考えた方が良く、その日の足はその日に取らない限り追えません。

鹿の移動速度は大体時速500m〜1kmぐらいで、すこしメス群れより速く移動しますので、時速1kmより速く歩かないと、距離が詰められないことがあります。ただメスよりも若干警戒心が薄く、急に鳴かれることはまずないので、気付かれるまでは、比較的距離は詰めやすいです。

雄は老練になる程落ち着きがあり、こちらを目視確認していて、こちらが多少動いたとしても、大きく動いたり変な音をださない限り、グッとこちらを向いたまま動きません。この場合は、「目を合わせたまま」ゆっくりと銃を用意すれば撃てます。

若い鹿は、こちらを目視確認している時に、少しでも動くと走ります。ただ、こちらが動かなければ1分もしないうちに耳をそらし、目をそらし、草を食べ始めたりします。この場合は、とにかく草を食べ始めるまではじっとし、それから物音を立てないように銃を用意すれば撃てます。

風の影響がある時は、メスよりも率先して「避けられる場所に行く」傾向があるので、普段いるような場所よりも低い場所に行くと出くわす可能性があります。



メス群れの忍び猟


メス群れは、基本的に足跡が揃っていて、その中で小さな足がふらついていたら、1歳の雄がいることがわかります。

メスは「半径2キロ以内の同じ場所の周回」をしているので、大抵足を見つけたら、その場所は周回ルートのどこかになるので、前後に必ず、「寝屋」「水場」「餌場」「休み場」「遊び場」があります。

また、風の日や吹雪でもない限り、ほとんど同じルートを似たような時間帯に毎日通るので、2〜3日あけてまた見に行っても、大体同じところに足跡があることが分かります。

なので、その日には獲らず、地図で地形等からそのルートと時間帯を把握し、別日に風下からそこに行くと、見つけることができたります。

メス群れの移動速度は平均時速500m程度なので、人がものすごくゆっくり進んでも追いつけます。なので、「読み」で距離をつめ、「気づかれる前に」銃の準備をすることができます。

ただ、メスの方が臆病なので、見つかると厄介です。

母鹿は、怪しいと思ったものは「じーーー」っと見つめ、目と耳の両方がこちらを向いている時に動いてしまうと、400mぐらい離れていても逃げます。近ければ走ります。

子鹿は、よく「驚く」ので、人が「動く」のをみるといきなり鳴いたりします。ただ、警戒をやめるのも早く、何か物音に気がつきこちらを「ぐっ」と見ても、数秒で警戒を解きます。ただ、そこで動いてしまうとたいてい「ピー!」という警戒音で鳴かれ、そうなると大抵は群ごと走って逃げられてしまいます。

ただ、一度走られたとしても、こちらの視界から消えるか消えないかのところで、ほぼ必ず「止まってこちらを観察」しますから、チャンスはまだあります。

この時は、まず自分も「鹿の視界(できれば音も)から消える」ところにゆっくりと「頭を下げ」ながら移動し、しゃがむか伏せの状態で銃を用意し、そのまま1〜2分じっとします。

そして、できれば音を立てず、匍匐前進でゆっくり進み、ギリギリ鹿が確認できるところまで移動します。ちなみに頭を上げたり、音を出したりすると逃げますが、ゆっくり音を立てずに動くと、バレていても逃げません。

この時、鹿は、背が高かったものが急に低くなったので「?」という顔をして、多少動いてもとにかくじっとこちらを観察しています。なので、逆に撃ちやすくなったりするんです。



親子群れのどれを狙うのか


メス群れの時は大抵「親子」なので、この時、「どれを狙うか」ですが、2頭なら子鹿をとって母鹿を残す、群れならなるべく先頭に立ちやすい年長の鹿を残すようにすると、翌年も同じところで獲れます。

逆に、二頭群れで母鹿を獲ると、子鹿はルートをまだ覚えていないので、小さい鹿だと餌場がわからず死んでしまったり、生き延びたとしても別群れに行ってしまうので、翌年に同じ場所で鹿に出会える確率は激減します。

同じように年長の鹿を獲ると、その後その群れが分解したりするので、同じ場所で翌年出会える数が減ってしまう可能性が高くなります。



射撃の大学

射撃は半年間で8割あたるようになる!? 射撃は全て「同じ」ように撃つ事で効率良く上達し、全くの初心者から半年間で、散弾、ハーフライフルでの競技射撃、狩猟、その全ての射撃で8割以上あたるようになった著者。 銃の撃ち方の基本から練習法、クレー射撃(skeet、trap)、狩猟(エゾシカ、鴨など)のやり方などを忘備録的に書いています。

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